2015年6月 「春霞」

「春霞」

6月24日



5月号は私の体調不良でお休みにしました。
そろそろネタも尽きて来ていました。
そこそこの数を飲んで、テーマ一つと重ねて書くのは実際に書いてみたら、結構しんどいもんです。

そこで、4月号までの15話を「第一部」としまして気を取り直して、今月から「第二部」の始まりです。

第一部の初っ端は「北秋田」でした。
テーマは「冷酒って面白い」ってところでしょうか。
何気なく買った初めてのお酒が結構美味かったので、
少し書いてみる気になったのでした。

今月の「春霞」も秋田県の酒です。
奇しくも秋田県のお酒が、再び始まりのお酒となったのですが、こちらは現在、我が家の常備酒となりつつあります。




このお酒の蔵は、秋田県仙北郡の六郷にあるのですが、「六郷」という場所は名水百撰に指定された水の町で
水質は軟水、栗林の仕込水と呼ばれているそうです。

何故、秋田県のお酒に私の味覚が反応するのか、「北秋田」も思い出しながら、つらつら考えてみると基本的には「辛口」であることに気付きました。

今も飲んでいる「華鳩」も、昨年の6月号では「ちょい辛」と表現していたのですが、「春霞」と比べると、「甘口」に感じてしまいます。
で最近、「華鳩」から「春霞」にシフトしている。
段々と「酒飲み」へとシフトしているのだろうか。
(誰が何と言おうと「酒好き」です。念の為。)

ただ「辛口」「甘口」といっても奥が深いもので、ここが日本酒の面白いところだと思っています。
甘口辛口は一般的には「日本酒度」で表現されますが(以前に書いたように、比重での表現です)お酒に含まれるアミノ酸や「酸度」で変化します。
「辛口」は一般的に「酸度」の高いお酒であり、「淡麗」はアミノ酸が少ない時の味わいとなります。

私は「淡麗ちょい辛」派だと思っているのですが、昨年四月に角館で飲んだ、「超辛口」の「刈穂」が土産に買った、中口と思われる「朔雪」と同じような味と感じたのは、そこら辺りに理由があるのではないかと思っています。
(残念ながら「刈穂」のラベルは見ていません)

日本酒(特に冷酒)を飲んでいて、美味いと感じたら酒瓶に貼ってあるラベルを見てみたら如何でしょう。
「酸度」や「アミノ酸度」まで書いてあるラベルは私が収集しているラベルのうちでも少数派ですが、自分好みのお酒の傾向が分かるかも知れません。

この「春霞」はラベルに名前が付いています。
前出の「青ラベル」は「純米吟醸」ですが、次の「栗ラベル・緑」は「特別純米酒」です。




先日空けた春霞は「田んぼラベル」の命名でした。
「純米吟醸酒」で美山錦を55%精米したものです。
ア度数は15度、亀山酵母を使っています。

収集癖のある私が始めたお酒のラベル収集ですが、その「味」「コク」「風味」に惹かれて、酒瓶に貼ってあるラベルをあれこれ読むようになってその奥深さに魅せられてしまったのでした。
「お酒」って本当に「楽しい」し「美味しい」。

2015年7月 「八海山」

「八海山」

7月28日



はい出ました「八海山」です。
何故、このシリーズの一部の方に登場しなかったのか。
答えは簡単。ラベルが無かったのです。

では「八海山」を飲んでいなかったのか。
いやいや、私が自宅外で飲むお酒の中では、一番飲んだ回数の多いお酒だと思います。

出会いは徳島市内にある、とある割烹でした。
先輩に勧められて飲んだのですが、その時は強烈な印象を持ちませんでした。
ただ、悪い印象も無かったので、外出先や旅行先で、日本酒選びに迷った時に、「八海山」を見掛けると飲んでいました。

で、家の外でよく飲むので、自宅では飲まなかった。
当然、ラベルを採取することが出来なかった。
ラベル提示をほぼ必須の条件に課しているこの場では、書こうにも書けなかった、というのが真実です。

で、今年「新潟淡麗酒の陣」に参加しまして、現地で「八海山」を入手し、やっと登場になりました。



「八海山」はご存じのように全国レベルのお酒であり、新潟県南魚沼市の八海醸造株式会社で造られています。
私が「全国レベル」と表現したのは、日本各地の食事処で、大抵目にする銘柄だからです。
地酒のラインアップに加えて、日本酒メニューに加えられているのをよく見掛けます。

「酒好き」には「この一本」というお酒があるのに、日本酒を出す店の多くに「八海山」が並べられている。
「黄桜」や「白鶴」などの大衆酒とは趣を異にした、お酒も料理の一品とするような食事処で、です。

そこには品質を保ち、尚かつ醸造量をこなし続ける蔵元の並々ならぬ努力が見て取れます。
確かに、全国何処で飲んでも「八海山」は「八海山」でした。

新潟淡麗の名の通り、洗練された爽やかな飲み口、雑味を殆ど感じさせない口当たりの良さ、本来はやや辛口なのでしょうが、私には中口で、ほんのりとした吟醸香は、飲む手を休ませることなく思わず飲み過ぎてしまうようなお酒です。
(「酒飲み」ではありません。「酒好き」です。)



特段にアルコール度数が高いということもなく、「渾身」の酒米を使用し、極限まで磨き上げて特別な製法で丹念に造ったお酒でもありません。
それでも「八海山」を飲んでしまう。

一言でいうなら「外れが無い」お酒だと思います。
何かの席で、食事が会話の手段となるような場で、それでいて静かに確かに「お酒」を主張し、食事も会話も、更に楽しいものとさせてくれるお酒、そのようなお酒であると思います。

それも新潟一県に止まらず、日本各地に、私のようなファンを獲得している、そんな「全国レベル」を保っているお酒と思います。

いつか何処かで食事をし、日本酒を飲む機会があった時、そして、日本酒メニューに目当てのお酒が無かった時、
メニューに「八海山」が並んでいたら、是非一度飲んでみて下さい。
決して「外れ」ではないと思いますよ。

2015年8月 「小鼓」

「小鼓」

8月26日



「蒼空」以来、関西のお酒です。
兵庫県丹波市にある西山酒造場で醸造されています。
「小鼓」の命名は、あの高浜虚子がしたそうな。

創業1849年という歴史のある蔵元で、三代目社長がホトトギスの俳人である弟を通じて虚子と出会い、自ら「泊雲」と号して俳句に没頭し虚子と親交を重ね、1914年に虚子から「小鼓」と名を貰って誕生したお酒だそうです。
虚子直筆の文字もあるそうな。

そんな「小鼓」の謳い文句は「フレッシュ」です。
いろんな方面で、色々な賞も取っているので、私が知らなかっただけで、関西の「酒好き」の方には、結構、名前の知られた銘柄ではないかと思います。







私の所へ回ってくるのは、宴会場などでよく目にする500mlか300mlの瓶入りのお酒です。
「回ってくる」といっても、闇ルートで仕入れた酒、というのではありません。
大阪の豊能町に住む叔母が、いつも盆暮れ時に私の父へ送ってくるお酒を、私が横取りしているだけです。

ア度数は15度から16度、兵庫北錦を58%まで磨き、印象は辛口、風味は乏しいのですがインパクトがあり、「今、お酒を飲んでいます」という気持ちにさせる所謂「酒好き」の好むお酒ではないか、と思います。

また「フレッシュ」を売り口上にしているだけあって、特に「生酒」は限界突破しそうなお酒だと感じました。
(「酒飲み」ではありません。単なる「酒好き」です。)

ところが先日、そろそろ酒が飲めるようになった次男が結婚すると言い、彼女のご両親からの贈り物だと言い、「渾身の1本」だと思われるお酒を持ち帰りました。
どうやら私の「酒好き」がバレているような。





相手の娘さんは池田市の育ち、そこに住まわれるご両親が選んだお酒が「小鼓」だったのです。
瓶に描かれた飾り文字の「小鼓」を見て驚き、調べてみることにしたのでした。

「路上有花・ろじょうはなあり」シリーズのお酒で、純米大吟醸であるのは勿論、値段も高い部類のお酒で、不味い訳が無く、それも「辛口」の方のお酒でした。
「いかん、バレとる」と感じながらそれでも、あっという間に空けてしまいました。

ズッシリと響く重さがあり、旨味が迫って来ます。
強力でありながら切れ味のよい風味がありました。
ちなみにラベルにある「泊月」は、弟の俳号です。

豊能町の叔母にしても、池田市に住まわれる次男の嫁のご両親にしても、恐らくご近所の酒屋さんに相談して、贈り物のお酒として「小鼓」を選んだものと思います。
地場のお酒として。それも誇れるお酒として。

日本各地には、このようなお酒が一杯有るのでしょう。
まだまだ飲み足らないと思うのでした。
(「酒飲み」ではありません。単なる「酒好き」です。)

2015年9月 「朝日酒造」

「朝日酒造」

9月29日



今月は酒造会社名を表題にしました。
何故なら有名な銘柄が一杯あるからです。

皆さんがよく知っているのは「久保田」だと思います。
最高峰の「萬寿・まんじゅ」(純米大吟醸)に始まり、「翠寿・すいじゅ」(大吟醸生酒・季節限定出荷)、「碧寿・へきじゅ」(純米大吟醸・山廃仕込)、まだ飲んだ経験のない「紅寿・こうじゅ」(純米吟醸)、そして私が好きな「千寿」(吟醸)があって、「百寿」(特別本醸造)なんてのもあるそうです。

「久保田」の名前の由来は、創業時の屋号だそうで、創業は1830年、「酒造りは米づくり」の理念の下で、地元JAと協力して酒米の栽培研究もしています。
ちなみに「久保田」シリーズは「五百万石」です。

で、本来の「今月の冷酒」の題は「朝日山」なのです。
会社名を冠する銘柄だけに、ざっと数えただけでも十五種類くらいのお酒があります。
カップ酒まで揃っているところから想像するに、新潟県、いや東日本の大衆酒なのでしょうか。

初めてその銘柄を知ったのは沖縄で泊まったホテル。
何と徳島の「芳水」と並んでメニューにありました。
その時は勿論「芳水」を飲んだのですが、間を置かずして、私の「酒好き」を知っている友人が送って来たのが、一升瓶に入った「朝日山」でした。



この写真のラベルは古い物で、現在のと異なります。
特別本醸造なので、本来は熱燗で飲むものでしょうが、4合瓶に小分けして冷蔵庫に保管して飲みました。
美味かったですよ。瞬く間に全部飲んでしまいました。
(「酒飲み」ではありません。「酒好き」です。)
その当時は新潟県産などとは知らずに、正しく「新潟淡麗」の味に引き込まれてしまいました。

お酒のことが少し分かるようになってから、中元、歳暮の時期に自前の冷酒を購入するようになり、カタログで見つけた「朝日山」も購入してみました。




これも本来は燗酒なのですが、冷やして飲みました。
「朝日山」も「五百万石」を酒米としているのですが、お米の雑味を殆ど感じさせず、キレがあり、お酒を飲んでいるという実感が湧いて来ます。

それで今年の春先に出掛けた「新潟淡麗・酒の陣」。
期待していました。何せ現地で飲めるのですから。
勿論、真っ先に朝日酒造のブースに行って飲みました。
芋漕ぎ状態の中での試飲だったので、そして、その後あれこれと沢山のお酒を試飲したので、その味はよく分からないままでした。

本来の目的は現地で「朝日山」を仕入れる事だったので、駅前の「ぽんしゅ館」で「渾身の1本」を買いました。




ア度数は15度と吟醸並みですが、精米歩合が28%。
磨かれたお米の1粒がビニール袋に入れられて4合瓶に添付されていました。
勿論、現地で仕入れたお酒の中では一番高価でした。

ところが、一口飲んでみて失望のどん底へ。
先に書いた「純米」の方が私の口に合ったのでした。
(ううっ、こんなことなら「八海山」2本買うのだった)

大抵の「大吟醸」は、お酒が初めての人でも、それこそワイン感覚で楽しむことが出来ます。
しかし、そこにはやはり味覚があり個性が有ります。
少なくとも自分に買うお土産(お酒)は、ちゃんとリサーチして、味を確かめてから、購入するべきものだと反省したのでした。

2015年10月 「洗心」

「洗心」

10月20日



これ実は先月の表題の予定でした。
ところが「洗心」のラベルを見たら「朝日酒造」とあり「朝日酒造」なら先に「朝日山」を書くべきだと考え、ネットで検索したら一番に「久保田」が出て来ました。
で、冒頭に「久保田」のことを書いていたら、「洗心」まで話が届きませんでした。
本当にここの酒造会社は凄い。美味いお酒が目白押し。

入手のきっかけは「これ飲んでみて」と貰った1本。
一升瓶ですが、お勧めは冷やして飲むことだそうです。
冷やしました。
いつもの如く4合瓶に小分けして。
ここに私が書きたい位のお酒だったから美味かった。
正しく新潟淡麗を体現し、爽やかな吟醸香に飛びっきりのキレの良さがあって、それこそあっという間に飲み切ってしまいました。
(「酒飲み」ではありません。「酒好き」です。)



ところで、朝日酒造のHPを見て初めて分かったことですが、このお酒、季節限定品だそうな。
先月書いた、産地仕入れの「得月」も季節限定品です。
でも私は、迷うことなく「洗心」に飛び付きます。

そして何がこうも違うのかいろいろと考えてみました。
どちらも純米大吟醸であり、アルコール度数は15度、28%と極限までお米を磨き、日本酒度は+2です。
ただHPの図によると、どちらも「味が深い」方ですが「洗心」は僅かに「香り豊か」の方に位置し、「得月」は僅かに「香りしずか」となっています。

そして決定的に違ったのは「お米」でした。
「洗心」は契約栽培米の「たかね錦」、「得月」は地元新潟県産米の「ゆきの精」でした。



HPを見て、私が更に注目したのは「酸度」です。
「洗心」が1.2であるのに対して、「得月」は1.1です。
先月の「得月」のラベルにも、今月の「洗心」にも「酸度」の表示が有りませんでした。
ちなみに「得月」のお米の表示は「新潟県産米」です。

同じ蔵で同じ水を使って醸造している筈なのに、お米が違うとここまで味が変わるのかと感心します。
そして「酸度」。「春霞」にも書いたのですが、「酸度」が上がると一般に「辛口」となります。
「洗心」は私の好きな「辛口」に仕上がっていました。
(言うまでもなく「酒好き」です。念のため。)

同じ朝日酒造の「久保田」と「朝日山」は、「五百万石」を酒米として使っています。
「得月」と「洗心」は、その酒米から違う訳です。
味に天地ほどの差があって当然なのかも知れません。

それにしても、各々の酒蔵には住み着いた乳酸菌があり醸造環境も仕込み水も同じの筈なのです。
勿論、お米の磨き方や、火入れ・貯蔵の方法でそこから醸造されるお酒の味は変わると思います。
しかし風味の大凡の方向は、似通ったものになると思うのです。

毎年の天候によって出来るお米の味は違うといいます。
当然、お米を原料とする日本酒の味も変わります。
それでもそれぞれの蔵元は、その蔵元の「銘柄」の味を守ってお酒を造っています。

それが証拠に、日本酒は「銘柄」で飲まれています。
以前に飲んだ風味を期待しているからだと思うのです。
異なる「蔵元」に、「その蔵元の」風味を期待して、「銘柄」が選ばれているのではないかと思うのです。

私が凄いと思うのは、同じ蔵元で「久保田」にしろ「朝日山」にしろ、「洗心」「得月」についても、異なる風味のお酒を造り「続けている」ことです。

お米が違うとはいえ、「久保田の風味」「朝日山の風味」そして「洗心の風味」を「一つ」の蔵元で造り続ける
のは、その風味を守り育てる為の膨大な研鑽が積み重ねられているからだと思うのです。
(私、朝日酒造からは利益供与は受けておりません。
単なる「酒好き」で「大ファン」なだけです。)

本当に日本酒って奥が深いと思います。
日本全国で頑張っておられる杜氏さんに乾杯。
美味しい、美味しいお酒を今年も頼みます。

2015年11月 「賀茂鶴」

「賀茂鶴」

11月27日



あの「賀茂鶴」です。オバマさんの。
昨年4月来日した合衆国大統領に安倍首相が銀座の有名鮨屋さんで勧めたお酒です。

ネットで調べると、そこの鮨屋さんは「賀茂鶴」を常備のお酒にしているようで、人気商品「ゴールド賀茂鶴純金箔入り」は皇室へも納めているとか。(知らなんだ)

という訳でもないのですが、この11月に広島の西条へ行く機会があり、「ついで」に現地の蔵へ寄って「賀茂鶴」を買いました。
(決して「お酒」を「仕入れ」に行ったのではありません。「ついで」です。)





写真はそのパッケージと中身です。
左端のゴールドが前述のお酒ですが、写真は4合瓶で、別に丸瓶と角瓶がセットになった1合瓶の詰め合わせが有ります。

安倍首相がオバマ大統領にお酒を注いでいる写真は、1合瓶の角瓶の方のようですね。
1合瓶セットは私の父への土産にしました。
ですから今回は写真が有りません。

ところで今月号に「賀茂鶴」を選んだのはオバマさんや皇室が理由ではありません。
そんなこと知らなかったんだから。
現地の蔵で、購入するお酒を物色していてオバマさんの写真がありました。あれ?あれは「賀茂鶴」か!、という具合でした。

実はうちの三男が東広島市の西条に居て、「酒好き」な父親へのお土産に、帰省の度に日本酒を買って帰るようになったのです。
先日は蔵へ行き買って来たと言うとりました。
何せ帰り道に酒蔵があるもんですから。



左側が今まで買って帰っていた「賀茂鶴」これは全国版(と思われます)
純米吟醸酒でアルコール度数は16度以上。
やや辛口に仕上がっていて重量感があり、「呑み易い」というよりも「呑み応え」がある感じがしました。

8月号で紹介した「小鼓」のようなキレでは無く、余韻を残す風味と言いますか、しかし雑味は全く感じられません。
料理の最初から最後まで安定した旨味を保ち正しく「食中酒」という印象です。

写真の右側が、今年のお盆の帰省時に三男が西条にある蔵に寄って買ってきたものです。
お分かりでしょうか。最初に並べた4本の内ゴールドの右横に同じものが有ります。

これ美味しかったんです。夏に飲んだ時。
で、これは現地に行かないと無いだろうってんで、行きました。買って帰りました。
(あくまでも「ついで」です。念のため。)
今、現在飲んでいます。

何が違うかと言いますと、こちらは原酒。
ア度数は18度以上で、涎が出そうな上に「キレ」があるんです。
口の中で広がる旨味が僅かな余韻を残しサッと引いていきます。
「淡麗チョイ辛派」の私好みの酒なのです。
吟醸香を際立たせない醸造方針も私好みで、我が家の「常備の酒」に加えたい、のですが「原酒」なので現地へ行かないと入手出来ないようで、「賀茂鶴」の蔵に置いてあったお酒のカタログにも掲載されていませんでした。

オバマさんも飲んだゴールドは未開封です。
正月に子供たちと飲むことを楽しみにして、ただ今、冷蔵庫で眠ってもらっています。

今回は起承転結なしのお酒の話でした。

2015年12月 「刈穂」

「刈穂」

12月16日



今年1月号に書いた「角館の酒」で登場した、あの超辛口という触れ込みの「刈穂」です。
今年8月、大曲の花火大会を見物出来ることになり、またまた秋田県へ行って参りました。お酒の美味しい処なので当然、お土産に日本酒を買って帰りました。
(決してお酒を「仕入れ」に行ったのではありません)



秋田県も新潟県に負けず劣らず、美味しいお酒が沢山ある処です。
このコーナーでも、初回の「北秋田」に始まり、「角館の酒」「春霞」と3回も登場し、他にも「太平山」「秀よし」「朔雪」等の名前を出しました。

今回はその中の「刈穂」です。
昨年、角館に旅行した時に、「超辛口」という触れ込みのお酒を居酒屋で注文し、「中口」か「甘口」と感じたのがどうにも気になっていたので、物産館の日本酒コーナーに並んでいたものを見つけて、買って帰りました。

お土産の4本の内、真っ先に飲んだのも「刈穂」でした。
初口は「なんだこりゃぁ」という重量感のある「辛口」で「角館で飲んだ時と違うやないか」と思ったのです。

あの時は「焼き鳥」の「たれ」の味が際立って感じられ、その対極に「確固たる主張をする爽やかな風味」のお酒を意識出来ました。
その「爽やかさ」が無い。
今考えれば、これは食中の印象だったのです。
で、前出の話は「初口」の話。
当時の「初口」は記憶に無く、食中の「美味しい」という感触だけ印象に残っていたのでした。

そして今回も、食事が進むに連れて、あの「美味しさ」が復活したのです。
ぐんぐんと飲みやすくなり、微かなお米の風味を感じさせたと思ったら、その爽やかなインパクトがキレ良くすっと消えて行くのです。
ただやっぱり「どこが”超”辛口なの???」でした。
(私が「酒飲み」になっているのであろうか?)



お酒の本には、どの日本酒も最初口に含んだ瞬間に感じるのは甘味だと書いています。
また「辛口」とは、「甘口」ではないことであり、今流行の「淡麗辛口」は、言い換えれば「あっさりとして甘くない酒」だそうです。

「味音痴」の私は、まず「初口」で「甘口」「辛口」を大雑把に表現しています。
「初口」は全て「甘味」だと言われると戸惑ってしまうのですが、「甘味」の無いお酒が「辛口」だと言われると、妙に納得してしまいます。

確かに「刈穂」は「甘口」では有りません。
初口では全く「甘味」を感じさせず、度数の高いアルコールを飲んでいるような印象があります。
勿論日本酒ですからお米の風味はあるのですが、ふくよかで優しいお米の風味が、極限まで削り取られた、ゴツゴツした感じでした。
ところが飲み続けるにつれて、ゴツゴツした風味が消えて行き、キレのある爽やかな風味が際立って来たのです。
しく食中酒でした。

反対のことが「甘口」のお酒で感じることがあります。
初口は口当たりが良く、何かの果物でも食べているような印象があるのですが、食事が進むに連れて「むつごく」感じるようになってしまう、そんな「甘口」のお酒です。

では「辛口」のお酒とは一体何なのか。
「甘口」のお酒は食中酒に成り得ないのか。
となると、それは間違っていると思う。
「辛口」「甘口」は極言すれば「水より軽い酒」か「水より重い酒」か、ということになってしまいます。
しかしそこにお米の風味が溶け込み、果物やら穀物の芳しい香りが生じて、「一つ」の食品となっています。

それぞれのお酒が持つ風味の違いも勿論ですが、人にも味の好みがあり、私が「むつごい」と感じても、他の人には「豊かな味わい」と感じられるかも知れません。
私が「刈穂」に感じた風味を、他の人が同じように感じるかどうかは分からないと思うのです。

ただ「辛口」のお酒が、或いは「甘口」のお酒が、自分が食べている料理に、どのような変化を与えているのかを、自分の味覚で確認しておくことは、これからの食生活を、更に豊かにするのではないかと思っています。

2016年1月 「真澄・吟醸生酒」

「真澄・吟醸生酒」

1月26日



今月は長野県のお酒です。
昨年晩夏、お中元のお酒も飲み尽くしてアワリカーで家内が買って来ました。

家内は少しだけお酒を飲みますが、元来、食への好奇心が強いので、私が銘柄を指定しないでいると、初めてのお酒をあれこれと仕入れて来ます。
このシリーズ冒頭の「北秋田」もそうでした。

で、今回の「真澄・吟醸生酒」も、人の名前のようだと面白がって買って来ました。
「北秋田」もそうでしたが、これも当たり。
まだ暑さの残る季節に爽やかな喉越しのお酒に出会うことが出来ました。



初めて口にした印象は、あの「白山」。
一部5月号に登場した幻の酒「白山」です。

微かな吟醸香に、お米の癖を殆ど感じさせない中口のキレの良いアルコール風味。
「あれ?これって?うわー美味い!」でした。
で買い占めに走ったのですが、もう店頭に無く売り切れた後でした。
(やっぱり「幻の酒」なのか)

それで例の如くHPから検索してみました。
「商品のご紹介」頁に一覧表がありますが、それぞれの銘柄に「日本酒度」は勿論のこと全てに「酸度」と「アミノ酸度」の表示がありそれだけでも蔵の熱意が伝わって来ました。

「真澄」の命名が諏訪大社のご宝物に由来することだけをこの場で紹介するに止めて、後の詳細はHPに譲ることにします。
今回のお話はHPのあちこちに登場する「協会7号」という清酒酵母の話です。

簡単に言うと、デンプンが主成分のお米は、そのままではアルコール発酵が出来ません。
そこで麹菌によって、まずデンプンを分解しできたブドウ糖を「清酒酵母」が分解してアルコールを生成するわけです。

「協会」と名の付く酵母は、日本醸造協会が「評価の高い酒を造る蔵元」から酵母を入手して、協会で培養し頒布する酵母のことで、1号、2号と番号が付けられています。
勿論、各県、各地域でも様々な酵母が開発されており、自家酵母を使う蔵もあります。

その「協会酵母」の中で、現在よく使用される「協会7号」という酵母の「実家」が、「真澄」の宮坂醸造株式会社の蔵なのです。
今回の表題となった「真澄・吟醸生酒」も7号系酵母が使われています。



協会酵母は専門機関によって管理されているので、毎年の性質が安定しているという利点があります。
使用頻度が高いのは、7号系や9号系だそうで各々の酵母には勿論違いがあり、それが日本酒を変化に富んだ「食品」にしています。

例えば吟醸香ですが、炊いたご飯の香りからは想像も出来ないような日本酒の吟醸香は、酵母が造り出しているものです。
(日本酒の教科書:木村克己著から引用)

7号系は爽やかで清楚な香り、9号系は華やかな香りだそうですが、うーん、まだサッパリ分からん。

2016年2月 「第二部終了のお知らせ」

「第二部終了のお知らせ」

2月23日



ネタ切れにつき休載します。
第三部は月刊ではなくて、「季刊」くらいにしようかな、などと不届きなことを考えています。
で、今月は写真無しのお話です。

今月、金沢まで行って参りました。
雪景色でライトアップされた夜の兼六園と、開業1年目になる北陸新幹線に「乗り鉄」をしようと行って参りました。

新幹線の「グランクラス」はなかなかのものだったのですが、雪の兼六園は外れでした。
到着日に雪は降ったものの、庭園のあちこちに掻き寄せた雪があるだけで、寒いだけでした。

実はもう一つの私だけの楽しみは、この欄第一部5月号に書いた「白山」でした。
ただ現地の居酒屋では「白山」に出会えず、特別純米のお土産を買うだけとなりました。

代わりに出会ったのが「加賀鳶」という酒。
何せ到着した日のホテルの夕食で飲んだのでその印象は強烈でした。
爽やかな初口、微かに漂う心地よい吟醸香、喉越しもキレも良く、最初の一口で一気に旅の疲れを取ってくれたような気分でした。

それで翌日から「加賀鳶」「純米・翔」の銘柄を求めて、物産館から駅の土産物屋、果ては町中の酒屋さんまで探しました。
ところが見つからない。

アルコール度数は15度以下と見当をつけて酒屋さんで問うたら、「15度以下の酒は日本酒じゃ無い」なんて言われまして、すごすごと退散。

あちこちで探したので、お土産に9本買って帰りました。本命の「加賀鳶」が5種5本、「菊姫」「手取川」「宗玄」の純米を3本、そして「白山・特別純米」を1本です。

帰宅して一番に飲んだのが、「加賀鳶」の純米吟醸・天翔・生原酒だったのですが、やっぱり違う。
味が少し濃いような、アルコール度数の違いかなと感じました。

「加賀鳶・山廃純米・超辛口」というのも平行して飲んでいるのですが、これも純米の風味が勝っていて、吟醸香が今一つ足りないような気がしました。

もう1本、楽しみの「白山」も飲んでます。
これは当たり。家内が美味しいと。
ただ確かに美味しいのですが、あの「幻の白山」に比べると、「爽やかな一陣の風」が「そよ風」のような印象です。
「ハッとする」印象が感じられません。

やはり「一期一会」なのだと思います。
機会があれば、またこの場で、そのような素晴らしい日本酒の紹介が出来れば嬉しいなと思っています。